経済産業省は2008年2月29日、ユーザー企業がパッケージ・ソフトの導入などをシステム・インテグレータ(SIer)に委託する際の契約書のひな型を策定した。3月13日まで同省のWebサイト上で公開し、パブリック・コメント(修正意見)を募集する。その内容を反映し、3月末をめどに正式版とする予定だ。

 公開した文書の正式名称は、『「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」~情報システム・モデル取引・契約書~(パッケージ、SaaS/ASP活用、保守・運用)<追補版>(報告書案)』。2007年4月に策定したモデル契約書(第1版)の「追補版」で、契約書のひな型と解説書からなる。第1版との違いは、想定するユーザー企業像と対象システムだ。

 経産省は当初、追補版の報告書案を2月14日に公開する予定だった。しかし、その時点の案では「外部設計」と「内部設計(ソフトウエア設計と制作)」の作業や契約の区分が明確に分かれていないなど、システム開発における作業項目を定義した「共通フレーム2007」と矛盾する部分があったという。そこで修正し、今回の公開となった。

 追補版と第1版では、対象とする企業像やシステム像が異なる。第1版はSIerと対等に交渉できるユーザー企業が、大規模システムをウォータフォール型で開発する場面を想定していた。これに対して追補版は、ITや法律に詳しい人材がいない中小企業が、パッケージ・ソフトやSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)といった“できあい”ソフトを導入するケースを前提とする。

 「システムの信頼性を高めるため契約段階からユーザーとベンダーの役割や責任分担を明確にする」という第1版のスタンスは、追補版でも変わらない。ただ、交渉力が低いユーザー企業の利用を見込んで、SIerに説明責任を強く求めている点が特徴だ。「ITに詳しくないユーザー企業から受注する場合、相対的にSIerの専門的知見に対する責任は重い」(情報処理振興課の石川浩課長補佐)との判断からだ。

 今回の報告書では、要件定義・パッケージ選定から運用支援までのシステム導入工程を11種類に分類。その上で「基本契約書」と、工程別の「個別契約書」のひな型を示している。基本契約書で定めるのは、どの工程の契約を結ぶかと、権利関係や契約解除の方法といった基本的な条項だ。個別契約書は「重要事項説明書」と名付けられており、基本契約書の別紙として機能する。工程におけるQCD(品質・コスト・納期)のほか、ユーザー、ベンダーの役割・責任範囲を定める。